木の生命力の不思議 その1

木はなぜ数千年も生きることができるのか?

生命体としての動植物の中で、「樹木が最も長生きする」と言うことに異論はないでしょう。

人間は病気もせず天寿を全うしたとしても、たかが百数十年、他の長寿の動物たちもあまり変わらないようです。

それに比べて、樹木はその種類・個体にもよりますが、数千年生き続けているものがあります。その代表格が屋久島の縄文杉で、一説では樹齢7200年とされていた時期もありましたが、最近では樹齢3000~4000年というのが通説になっているようです。

それでも、卑弥呼の時代から生き続けているということになり、その生命力には驚嘆せざるをえません。

樹木の性質上、生まれたその場所を一歩も動くことなく、長期間の旱(ひでり)・落雷による山火事・台風、地震などの天変地異をくぐる抜けて生き続けているのです。

その長生きできる理由の一つは、幹の内部構造・性質に起因しているようです。

 

この画像はケヤキの大木の輪切り材です。

年輪の中心部を「髄」または「樹心」と呼びます。

その周りの赤味が強い部分を「心材」(赤身とも言う)、樹皮に近い白っぽい部分を「辺材」(白太とも言う)と呼びます。

木も人間と同じように代謝を繰り返しながら細胞分裂によって成長しているのですが、それは樹皮の近くの辺材部分に限られているのです。また、この辺材部分には道管(広葉樹)や仮道菅(針葉樹)があり、根から水分や養分を吸い上げ、枝葉に送る働きもあります。

幹の内側の心材部分は木の成長に伴って、細胞分裂の機能を失い、細胞は死滅していきます。、ただ、この時に樹木に含まれる「リグニン」という物質が木材繊維の細胞壁に貼り付いて強力な接着剤の役目を果し、幹の心材部分は極めて強固に固体化していきます。

 

簡単に言うと、樹皮に近い白太部分は木としての成長を続けている反面、心材部分は細胞が死滅している、つまり生命体としては死に等しい状態なのです。一本の木(幹)の中で成長している部分と死んでいる部分を併せ持っているのが「木」で、このような性質こそが、長生きと巨大化を可能にした理由ではと考えています。

水分や養分が必要なのは、樹皮近く辺材部分幹及び枝葉だけで済む訳で、巨体でありながら、長い期間雨が降らなくても、生き延びることができるのでしょう。その他にも根の働きや落葉など、長生きするための機能が木には授けられているようです。

 

空襲と震災をくぐる抜けて生き続けているイチョウの木

これは、NHKの「にっぽん巡礼」という番組で初めて知ったイチョウの木の話です。

神戸市灘区に一本の「イチョウ」の大木があります。このイチョウは太平洋戦争でのアメリカ軍の神戸大空襲によって焼かれ、さらに阪神大震災でも火事によって再び大火に覆われながらも奇跡的に生き続けています。

幹は二つに裂け、内部は真っ黒な炭の状態になってさえも、生き続け、いまでも春には青々とした葉を繁らせているそうです。

半面とその内部が炭となりながらも緑の葉を付けているイチョウの木
(画像は中曾千鶴子さんのブログより転載させていただきました)

「奇跡的」という表現を使いましたが、実は2度の大火にも、焼き尽くされ倒壊しなかったのには、それなりの理由があったのです。

このイチョウの木は半面だけが炭状に焼け焦げています。火の海が一方向から押し寄せ、くすぶりながら激しく燃えたのでしょう。しかし、焼き尽くされ炭化層となった半面はやがて断熱材の役目を果たし、内部あるいは反対側への延焼を食い止めたのです。

特に幹が太い大木は表面が焦げるだけで、それ以上はなかなか燃え広がらないのです。火に対してさえもそれほどヤワではないのです。

半面が生き延びたこのイチョウの大木は、その白太(辺材)部分の導管も生き残り、根から水分や養分を吸い上げ、再生することができたのでしょう。

神戸に住んでいるので、一度実際にこのイチョウの木と対峙してみたいと思っているのですが、まだ実現できていません。そのうちにと思っていますが、樹齢200年とも言われているこのイチョウの木は、多分私より長生きするのだろうと思います。