手彫り技巧 – かまぼこ彫りの実際

■ 「かまぼこ彫り」の実際

木の看板でのロゴ文字の彫り方は文字が立体的に浮き上がって見える「かまぼこ彫り」で通常仕上げます。次の写真がそうですが、同じかまぼこ彫りでも、文字の雰囲気によって彫り方をやや変えています。力強い文字はややシャープに、丸みを帯びた文字は柔らかな感じになるよう仕上げています。

  

具体的には文字の特徴や部位に応じて、彫り方・深さ・角度などを吟味しながら、彫ったロゴ文字に墨(塗料)を載せた時に迫力と気品のある仕上がりになるよう心がけています。

看板のロゴ文字は筆文字が多く使われます。書家による筆文字はその個性やアート性を兼ね備えたものが少なくありません。その個性やアート性をさらに高めるための彫りができないものかと考えながら取り組んでいます。筆文字の特徴である「とめ・はね・はらい」及び「かすれ・にじみ」なども立体的な彫りでそれらしく表現できないものかと・・・。

下の画像は「雲」の雨冠の部分の「かまぼこ彫り」です。

例えば、①の「とめ」の部分の彫り断面は下図のようになっています。(解りやすくするためにやや大げさに描いています)

内側の 「a」 はほぼ垂直に切り込み、頂点に向かう 「b」 は凹型の曲線で昇り、「c」 は丸みを帯びた凸型の曲線で下ります。そして、外側の 「d」 の切り込みはやや角度を付けています。筆の「とめ」で一番力が入る、「c」と「d」の接点部分を一番深く彫ります。

彫りの深さにメリハリを付けることは、彫り文字の仕上げのメリハリにもつながり重要です。

筆文字のとめの部分や線が太いところはそれに応じて深く彫り、細いところは浅くします。「はね」や「はらい」のだんだん細くなるところは、だんだん彫りが浅くなっていきます。そうすることによって、筆の動きを立体化させ、躍動感のある彫り文字に仕上がります。

それから、上の「とめ」の断面図で「b」と「c」の接点(頂点)は両端の輪郭線(a&d)の中央ではなく、やや内側に寄せています。このような彫り方が筆の動きに合っているように思っています。もちろん、真っ直ぐに近い線では頂点は真ん中になります。

もう一つ、メリハリの効いた彫り文字に仕上げる要素として、頂点のエッジを効かすことがポイントになります。この説明では良く解らないですね。例えば、先の彫りの画像の②の部分の断面図は下図のようになります。

かまぼこ彫りですが、頂点(e)はかまぼこ状ではなく、尖った感じに仕上げます。光の当たり具合などによって、この方がシャープな彫り文字に仕上がります。

ただ、文字の種類・特徴によって彫り方は異なり、丸文字の頂点はややかまぼこ状に丸めて仕上げます。 最初の画像右側の彫り方がそうです。また、明朝体・ゴシック体・英字などの彫り方は上記とは幾分異なってきます。

そして手彫りによる彫り方に一定のルールがあるわけではなく、人によってさまざまのようです。上記はあくまでも私の手法の一例であって、これが最善の彫り方だという訳ではない、と言うことを付記しておかなければなりません。

 

■ かまぼこ彫り以外の彫り方

線の細い文字はかまぼこ彫りでは彫りが浅くなり、その場合は表札の彫り方の「V彫り」で仕上げます。V彫りだと細い文字も深く彫ることができますので、見栄えも良くなります。次の写真が「V彫り」の例です。

看板の制作工程のページでは「V彫り」と「かまぼこ彫り」について下記のような説明をしています。

上記2種類の他に、「平彫り」という彫り方があります。これは底面を平たく彫るやり方で、マークや落款の文字部以外を彫る場合などに使います。最初の画像右側の落款が「平彫り」で仕上げています。 ちなみに最初の画像の左側の落款は「V彫り」で仕上げています。

職業柄、街を歩いていて一枚板の彫り看板があると、やはり気になります。素晴らしい仕上がりの看板に出くわしたときは見入ってしまいます。ただ、ロゴ文字の輪郭線をV彫りで筋を入れただけの彫り看板も少なくありません。

レーザーやサンドプラストを含めた機械彫りについての知識はありませんが、やはり、自分の経験と感覚で仕上げる「手彫り・筆塗り」にこだわりながら、現代にマッチした看板作りを目指したいと思っています。